よくわかる!ピアノと湿気Q&A

空気は温度、水蒸気量(湿気)の違いにより常に移動を繰り返します。ピアノの内部は密閉状態ではありませんが、押入れ、タンスと同様、外部と空気の入れ替わりにくい構造です。特に打弦装置(アクション)、鍵盤の下では空気の循環が悪く、湿気がこもりがちになります。

ピアノのように閉じられた空間は、窓からの太陽熱、暖房で暖められた空気が内部に入り込みにくいため、室内と比べると温度の低い状態にあります。

まずは仕切られた室内で考えます。暖かい空気は密度が軽いため、室内を上昇します。こうして天井付近は暖められることで温度は高めに推移、そのため湿度は低くなります。この温度差を解消しようと空気は対流を繰り返しますが、それでも完全に温度が一定になることはありません。同様にピアノの底板(低い位置)周辺の温度は相対的に低く、湿度が高い傾向にあると考えます。

※ 湿気(水蒸気)はどの場所でも一定になるよう移動します。この湿り気(水蒸気量)が一定であれば、湿度は温度の影響を受けます。

ほとんど開閉しないピアノ内部の温度は室内と比べると約1℃低いといわれます。先の説明にあるように、空気中の湿気
(水蒸気量)が一定であれば温度が低い場所での湿度は高くなります。
室内とピアノ内部の温度差が1℃であれば、湿度で最大10%程度の差が生じます。

※ 仮に室内が湿度70%であれば、ピアノ内部は湿度80%になることもある

木は呼吸作用を持ちます。湿度が高いと空気中より湿気(水分)をとりこみ、また乾くと湿気を吐き出します。
ピアノのスピーカーともいわれる響鳴板も同様に呼吸します。そのため湿度の高い状態が続けば、木部は水分を取り込んだままの状態になります。音楽専門家によると、木部の水分は音質に大きな影響を与えるようです。因みにピアノにとって最適な湿度は60%前後といわれます。

空気中には、それ以上湿気を溜め込めない限界があります。これを飽和と呼び、温度により制御されます。
温度が上がればその分、空気中に湿気(水蒸気)を蓄えることができますが、逆に温度が下がると湿気を蓄えられなくなります。次に、元々湿度が高い状態にあれば、限界も早く訪れます。そのため、湿度の高い場所では、わずかに温度が下がるだけで、湿気は気体から水の状態に変わります。(結露現象)

特に弦やフレーム、ピンなどの金属部品に被害が見られます。
金属部品は木製品や繊維と比較すると熱(空気の温度)の伝わる速度が早く、そのため周囲の温度が下がればいち早く反応するからです。この金属部品に付着した結露水は時間をかけて錆となり、ピアノの動きに良くない影響を与えます。

部屋で水分を発生させない。極端な温度変化を抑える。また、余分な湿気を乾燥剤(除湿剤)、除湿機で取り除くことが必要です。

カビが生息する条件は他の生き物と同じく水、温度、栄養によります。
そのうち水は湿気(水蒸気)から補給できます。関係湿度が60%以上であれば、かなりのカビの生息条件となります。
また、ほこりの多い場所ではほこりから水分を補給することがあります。

除湿機が24時間稼働していれば、その部屋の湿度上昇は考えにくいところです。しかし、適切な湿度管理、および機器の継続使用は容易でないように思われます。次に、除湿機の運転を続けると、元々、その部屋に存在する水分より、はるかに大きな吸水量を取り込みます。これは、設置してある部屋以外の水蒸気までも除湿器が引き込むためです。また、運転停止後は、すきまから一斉に水蒸気が入り込み、約6時間で他の部屋の湿度と変わらなくなります。そこで、除湿機を使用する場合、乾燥剤および調整剤については、除湿機を補うものとした考え方が適正かと思われます。

湿気によるピアノの主な被害

1.キースティック
症状: 鍵盤が戻らない
理由: 鍵盤の動きを伝える木製品や毛織物製の部品が湿気により膨張したため

2.アクション内のスティック (ハンマースティック)
症状:鍵盤は動くが音が小さくなる、またはこもる
理由:アクションが湿気により動作不良をおこしたため
※文中に表示した「湿度」はすべて「関係湿度」

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