錆を防ぐ!鉄、金属部品の梱包、 コンテナ輸送時における業務用除湿剤の役割 

金属の種類のうち日常で最も見かける鉄は、鉄鉱石の主成分である酸化鉄を製錬することで作られます。

その過程において酸素が無理矢理に引きはがされるため大気中では極めて不安定な状態にあり、そのため、余剰の水分があると簡単に錆びついてしまいます。

酸素と水の豊富な地上では、何も手を加えずに鉄および金属の状態を維持することは難しく、腐食や腐食が進んだことにより生じる錆を防ぐには,費用を抑えつつも出来るだけ時間を稼ぐことが現実的選択となります。

金属の腐食および錆対策(防食)としては、金属に塗膜をつくることで錆を防ぐ塗装や、金属に被膜を被せて包むメッキ加工、また、水中や土中では電気を流すといった対策もあります。

このうち塗装が6割を占めるというものの、年間約4兆円が防食コストとして使われていることに驚かされます。  

ここでは梱包時の防錆対策として、湿気を取り除く業務用乾燥剤、除湿剤をご案内します。

湿気、つまり水蒸気の分子サイズは10万分の4メートル、これらは空気中の大半を占める窒素、酸素よりも小さいものです。この水蒸気は量の多いところから少ないところに向け平準化しようと空間を動き回ります

梱包時に除湿剤を使用する場合、除湿により水蒸気量が少なくなった場所に向けた水蒸気の更なる侵入を防ぐために、非透湿性(バリヤ性)のポリフィルムを使用して湿気を遮断します。

また、コンテナなど大きな空間を対象とする場合では、出来るだけ気密性を保つなどの工夫が必要となります

錆の発生は、環境的には湿度60%以上から多くなります。

また、更に湿度が高くなれば、金属が水の煙に包まれた状態にあるといえます。

また、空気のよどむ場所では、対流が少ないため周囲と比較して温度が低く、そのため湿度が高い傾向にあります。

同時に水分発散量も少なくなるため、結露が発生すると水滴がそのまま残り金属表面を攻撃し続けます。

この水に溶けた酸素も錆発生に影響を与えます。

尚、防錆を目的とした温度と湿度の設定は、温度20℃、湿度50%が理想とされます。

保存環境にとりわけ気を配る文化財では、刀剣の場合であれば湿度45%を目標とします

因みに上記条件下(温度20℃ 湿度50%)で水蒸気の侵入がその後ないものと仮定すると、結露の生じる温度(露点温度)は9℃です。

つまり、このケースでは11℃の温度低下ではじめて結露が生じるということになりますが、除湿剤を使用すると湿度を更に低下させることで露点温度を下げるため結露対策となります。

さて、梱包時の防錆対策では、これまでシリカゲルが多く使用されてきました。

シリカゲルには吸湿のみのA型と、吸放湿を繰り返すことで周囲を安定調湿するB型があり、設置条件によりそれぞれ使い分けをします。因みにシリカゲルは0℃以上の常温においては、温度差による吸湿率(性能)にそれほど大きな差はありません。

これ以外に塩化カルシウムを使用した除湿剤も近年は増加傾向にあります。

その理由として吸湿率はシリカゲル比で約5倍多く、そのためコンパクトかつコストパフォーマンスにも優れるところです。

尚、シリカゲルと異なり潮解性(液化する)があるため、安全対策のために固化(ゲル化)させるるための吸液剤が備わりますが、その素材は安全性、速乾性、にも影響することから、メーカーにより選択は異なります。

また、梱包では防錆ガスにより金属に被膜を形成させる気化性防錆剤と、業務用除湿剤を併用することもあります。

シリカゲル、塩化カルシウム系除湿剤はいずれも国家標準となるJIS規格により、使用量を算定することが可能です。